レントゲン機器を廃棄する方法は?注意点も合わせて解説
レントゲン機器のように医療施設で使用する機材は、家庭ごみのような通常の粗大ごみには分類されません。産業廃棄物として、専門業者やメーカーに処理を依頼する必要があります。 新品購入の場合は購入したメーカーが対応してくれますが、中古品の購入が珍しくない医療業界では、メーカー対応を期待できないケースも多いでしょう。 そこで今回は、レントゲン機器の廃棄方法や、破棄する際の注意点について紹介します。また、カルテやX線フィルムなど機器周辺の消耗品に関する廃棄方法も紹介しているため、レントゲン機器の破棄を検討している医療関係の方は、ぜひご覧ください。 目次 レントゲン機器は、病床数の多い病院の他、個人経営のクリニックや歯科医院でも導入されることの多い医療機器です。医療従事者にとって身近な存在ですが、いざ廃棄の必要に迫られても、どのように廃棄すれば良いのか分からないという方も少なくありません。 製造された年代によって材質や注意すべき危険物質の有無が異なるため、一般の不燃ごみと同じような扱いはできず、正しい廃棄方法で処分する必要があります。まずはレントゲン機器の廃棄方法と、廃棄ルートを紹介します。 「廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)」では、事業活動に伴って生じた廃棄物の一部を産業廃棄物としています。 レントゲン機器には廃プラスチック類などが含まれるため、産業廃棄物として処分しなければなりません。 レントゲン機器を廃棄するために廃棄業者(医療機関などレントゲン機器を所有する側)が行う作業は、以下の通りです。 レントゲン機器は、製造年代や型によって有害物質が含まれる場合があるため、事前に機器の型などを確認した上で廃棄しましょう。 医療用の機械や消耗品は、感染症などのリスクを考慮して備品ごとに細かく危険性がランク付けられています。検査室や手術室で使用する医療機械の他に、吐瀉物や血液などが付着している注射器・リネン類・包帯・ガーゼなども、定められた廃棄方法を守らなくてはなりません。 メーカーや専門業者を介して購入したレントゲン機器は、処分を依頼することができるなど、レントゲン機器の入手方法によって廃棄ルートが異なります。 レントゲン機器の入手元や引取先ごとの廃棄ルートは、以下の通りとなります。 販売業者などを介して廃棄する場合は、レントゲン機器の所有権を販売業者へ売買や譲渡する手続きが必要です。所有権を売買・譲渡することで、マニフェスト発行など合法的に廃棄手続きを進めることができます。 レントゲン機器は産業廃棄物にあたるため、正しい手順を踏んで廃棄しなければ、罰則が科せられることも珍しくありません。最大で5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金となり、禁止行為の一部は、たとえ未遂でも罰則が発生します。 また、手順の他にもレントゲン機器を廃棄するにあたって注意しなければならない点があります。人体に影響を及ぼす可能性も含まれるため、安全に廃棄するためには注意点をしっかりと把握しておくことが重要です。 ここからは、レントゲン機器を安全に破棄するための注意点を2つ紹介します。 レントゲン機器の中には、PCB(ポリ塩化ビフェニル)という有害物質が含まれているものもあります。PCBは理論上209種類存在するポリ塩化ビフェニル化合物の総称で、毒性が極めて強いダイオキシン類に分類される物質もPCBの一種です。 製造時期によっては、高濃度に含まれる機器と低濃度で含まれる機器があり、古いものほど高濃度のPCBが含まれている可能性があります。 近年、各自治体でPCBを含有する医療機器の廃棄が進められています。廃棄までの期限は以下のように定められており、期限を過ぎると事実上の廃棄不可となります。 レントゲン機器のコンデンサー(3㎏以上)は、高濃度の機器に分類されるため、早急な対処が必要です。 廃棄方法の手順で触れた通り、レントゲン機器の廃棄にはマニフェスト発行が必要です。マニフェストとは、廃棄物の流れ(処理の進捗)を確認するための伝票で、電子版の他、複写式の紙製を利用します。 マニフェスト発行は排出事業者が行う義務を有し、適切に処理が行われていることを確認しなければなりません。専門の産業廃棄物取扱業者へ直接レントゲン機器の廃棄依頼を行った場合は、機器を所有していた医療機関がマニフェスト発行を行いましょう。 メーカーに廃棄してもらう場合は、所有権を売買・譲渡する必要があります。リース業者や賃貸業者より、一時的にレンタルしていた機器については所有権がないため、マニフェスト発行は不要です。 レントゲン機器の使用に伴い発生する廃棄物は、カルテやX線フィルムも挙げられます。 電子カルテやレントゲン画像のデータ出力が普及している現代でも、あえて従来のカルテを使用している医療機関もあるでしょう。しかし、カルテやX線フィルムは個人情報を集約したものであるため、一般廃棄物として廃棄することはできません。 そのため、カルテやX線フィルムの処分方法に困っている方も多いのではないでしょうか。 法律では、カルテは5年間の保存が義務付けられています。よって、保存期間が5年以上のカルテは廃棄することが可能です。しかし、中には資料として価値のあるカルテも含まれているのではないでしょうか。 基本的に保管期間の過ぎたカルテは廃棄し、一部の有用な資料となり得るカルテは保存を検討する方針にするとよいでしょう。 仕分け方法も「すべて廃棄するもの」と「表紙や挿入用紙は残すもの」に分けて整理します。たとえば、健診のみ受けた患者や在学中・施設入所中のみ利用した患者など、今後の来院見込みがない患者のカルテは表紙ごと廃棄して構わないでしょう。これらに当てはまらない5年以上前のカルテは、表紙や挿入用紙のみ残すことで、基本情報は保管しつつスペースを整理できます。 カルテを廃棄する際は、万が一の事故を予防するためにも、専門業者へ処分を依頼することが最適です。JAPHIC(ジャフィック)マークを取得している専門業者は、個人情報の取り扱いに対し、一定基準の体制整備が認められているため、カルテの破棄におすすめだといえます。 X線フィルムは法律ではカルテ以外の診療情報となるため、3年間の保管義務があります。しかし、X線フィルムは患者の症例を裏付ける重要な資料でもあります。そのため、必要に応じて資料として有用なものは保管することがおすすめです。 撮影部位や対象によっては、資料として有用性が認められます。5年ほど前のものであっても、資料的な価値が期待できる資料を無理に廃棄する必要はないでしょう。 X線フィルムを廃棄する際は、個人情報の取り扱いに信頼のおける専門業者を利用することがおすすめです。一部のX線フィルムには銀が含まれるため、含有量によって買い取りしてくれる業者もあります。 医療関係機関で使用されているレントゲン機器などの備品は、粗大ごみとして処理することはできません。産業廃棄物に分類されるため、廃棄する前に必要な手順を踏まえ、各手続を済ませる必要があります。 メーカーや専門の販売業者を介してレントゲン機器を購入した場合は、メーカーが引き取ってくれる上、廃棄を代行してもらうことが可能です。引き取りと同時に所有権を売買・譲渡する契約を交わすと、スムーズに廃棄できます。 ただし、レントゲン機器の製造時期によっては有害物質への注意が必要です。まずは製造時期や有毒物質の有無について、取扱いメーカーへの問い合わせから始めましょう。1.レントゲン機器の廃棄方法は?
1-1.廃棄方法
産業廃棄物に分類されるものは、以下の通りです。
また、有害物質の有無によって廃棄を依頼する業者も異なります。必ず上記の手順に沿って型式名などを確認してください。1-2.廃棄ルート
2.レントゲン機器を廃棄するときの注意点
2-1.有害物質の有無
製造時期 PCBの含有リスク 昭和47年以前 高濃度の可能性が高い 昭和48年以降 低濃度の可能性が高く、1990年代製も一部含有リスクあり 平成2年2月以降 1990年2月以降は含有リスクなし
2-2.排出事業者の確認
3.カルテやX線フィルムの廃棄方法は?
最後は、カルテやX線フィルムの廃棄方法について紹介します。3-1.カルテの廃棄方法
資料として価値のあるカルテを破棄する場合は、以下のように一定の基準を設けて廃棄することがおすすめです。
3-2.X線フィルムの廃棄方法
しかし、X線フィルムは個人情報であることに変わりはありません。取り扱いには十分に注意してください。
銀を含まないX線フィルムは、産業廃棄物として適切な処理がなされる事業者へ処分を依頼しましょう。まとめ