医療機器における薬機法の規制|改正のポイントも紹介
医療機器や医薬品の取り扱いに関しては、法律で細かく規定されています。医療機器や医薬品について定められていた旧薬事法が、2014年に現在の薬機法に改正されました。法改正によって、医療機器についてのルールが増加・変更しています。
医療機器を導入するときには、「規制に則って流通している医療機器であるか」「販売者は認証制度を守り信用できる業者であるか」という点を確認する必要があります。そのため、医療機器を導入する施設側は、薬機法について正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、医療機器の分類、医療機器に関する法律の規制、改正ポイントなどに関して解説します。
目次
1.薬機法とは
薬機法の正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。薬機法の規制対象は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品となっています。2014年に旧薬事法から次の3点についての改正が行われました。
①医薬品、医療機器等に関する安全対策の強化 | 医薬品などの品質や安全性の確保に関する責任を販売者に課すなどの対策が盛り込まれている |
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②医療機器の特性をふまえた規制の構築 | 医療機器の製造・販売について認証制度を規定し、管理者の責任について明記している |
③再生医療等製品の特性をふまえた規制の構築 | iPS細胞やES細胞など再生医療に関する製品について規定し、特性をふまえた規制が設けられている |
薬機法について理解せず、規定に基づいた医薬品・医療機器の取り扱いを行わなかった場合は、行政指導や罰則を受けてしまう恐れがあります。
医療機器を購入する側も薬機法について理解していないと、違法業者から購入したり品質管理が不十分だったりして、患者さんに危害を与える可能性があるため注意が必要です。
1-1.薬機法で定められている医療機器の定義
薬機法で医療機器は、「人や動物の疾病の診断・治療・予防に使用するもの」または「身体の構造や機能に影響を及ぼすもの」と規定されています。さらに、医療機器は法律や政令で、「医療機器であることが定められている」という条件を満たす必要があります。
薬機法の条文では、医療機器は次のように定義されています。
「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
具体的には、体温計や血圧計は医療機器に分類されていますが、体重計や運動量計は医療機器ではありません。また、美容機器や健康器具として扱われているものであっても、医療機器に分類されていることがあります。
美容機器や健康器具という区分は薬機法の区分ではないため、医療機器の定義にあてはまるものは取り扱いに注意が必要です。
2.医療機器に関する改正薬機法のポイント
近年、再生医療等製品が開発され実用化に向けた規制が必要となったことを受けて、医療機器に関する記載が増加した点が、改正薬機法のポイントです。
さらに、ソフトウェアの規制や、第三者認証制度の導入もポイントとなります。
ここでは、医療機器に関する薬機法の改正ポイントについて解説します。
【医療機器に関する記載が増加】
改正後の薬機法では、医薬品とは別の章で医療機器に関する章が設けられました。安全管理とリスク低減のための取り決めや、新たな規制が加えられています。さらに、新しく再生医療等製品ついても言及されている点が改正のポイントです。
【ソフトウェアの規制】
旧薬事法では、疾病の診断・治療・予防などに使用されるソフトウェアは、医療機器に該当しませんでした。しかし、薬機法では医療機器と規定され、規制の対象となっています。
【第三者認証制度】
第三者認証制度を設けたことも改正薬機法のポイントです。厚生労働大臣が指定する高度管理医療機器・管理医療機器・体外診断用医薬品を製造販売する場合、対象品目ごとに登録認証機関の認証を受ける必要があります。
3.薬機法に基づく医療機器の分類
改正薬機法では、医療機器について「人体に与えるリスク」に応じて3つの種類に分類されました。さらに、日本やアメリカが参加する「医療機器規制国際整合化会議」では、クラスⅠ〜Ⅳの分類が行われています。
ここでは、医療機器に関するリスクによる分類について解説します。
医療機器 一般医療機器 リスク 非常に低い クラス Ⅰ リスクによる分類 不具合が生じた場合、人体へのリスクは極めて低いと考えられる医療機器 具体例 メス・ピンセットなど
医療機器 管理医療機器 リスク 低い クラス Ⅱ リスクによる分類 不具合が生じた場合、人体へのリスクは比較的低いと考えられる医療機器 具体例 電子内視鏡など
医療機器 高度管理医療機器 リスク 中等度/高い クラス Ⅲ Ⅳ リスクによる分類 不具合が生じた場合、人体へのリスクが比較的高いと考えられる医療機器 患者への侵襲性が高く、不具合が生じた場合、生命の危険に直結する恐れがある医療機器 具体例 人工呼吸器など ペースメーカーなど
この他に、「特定保守管理医療機器」「設置管理医療機器」という分類があります。
特定保守管理医療機器とは、保守管理や修理に専門的な知識が必要で、適正な管理が行われなければ疾病の診断・治療・予防に著しい影響を与える恐れがある医療機器のことです。
具体的には、X線撮影装置・CT装置・心電計などが挙げられます。
特定保守管理医療機器は、高度管理医療機器とは限りません。管理医療機器、一般医療機器であっても特定保守管理医療機器に指定されているものがあります。
一方、設置管理医療機器とは、特定保守管理医療機器の中で、設置して使用するために組立てが必要な医療機器のことです。
保健衛生上の危害発生を防止するために、組立てに関して特別な管理が必要で、厚生労働大臣が指定する医療機器のことをいいます。具体的には、高圧酸素患者治療装置や体外式結石破砕装置などが挙げられます。
3-1.一般医療機器(クラスⅠ)
一般医療機器とは、不具合が生じたときに、人体への影響が極めて低いとされる医療機器のことです。
製品例:鋼製小物(メス・ピンセットなど)・X線フィルム・歯科技工用用品など
薬機法では、次のように規定されています。
「一般医療機器」とは、高度管理医療機器及び管理医療機器以外の医療機器であつて、副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。
また、具体的な規制は次の通りです。
クラス | Ⅰ |
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申請者 | 第3種医療機器製造販売業許可が必要 |
製造販売規制 | 承認申請は不要 |
販売規制 | 販売の届出は不要 ただし、特定保守管理医療機器については、販売は許可制である |
3-2.管理医療機器(クラスⅡ)
管理医療機器とは、不具合が生じた場合でも人体へのリスクが比較的低いと考えられる医療機器です。
製品例:MRI装置・電子内視鏡・輸液ポンプ用輸液セット・超音波診断装置・歯科用合金・真空採血管・コンドームなど
薬機法には、次のように規定されています。
「管理医療機器」とは、高度管理医療機器以外の医療機器であつて、副作用又は機能の障害が生じた場合において人の生命及び健康に影響を与えるおそれがあることからその適切な管理が必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。
また、管理医療機器の具体的な規制は次の通りです。
クラス | Ⅱ |
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申請者 | 第2種医療機器製造販売業許可 |
製造販売規制 | 登録機関による認証 |
販売規制 | 販売の届出制 ただし、特定保守管理医療機器については、販売は許可制である |
3-3.高度管理医療機器(クラスⅢ・Ⅳ)
高度管理医療機器とは、不具合が生じた場合、人体へのリスクが比較的高いと考えられる医療機器です。また、患者への侵襲性が高く不具合が生じた場合に、生命の危険に直結する恐れがある医療機器(クラスⅣ)も含まれています。
クラスⅢの製品例:人工呼吸器・透析器・人工骨など
クラスⅣの製品例:ペースメーカー・人工心臓弁・ステントグラフトなど
薬機法では、次のように規定されています。
「高度管理医療機器」とは、医療機器であつて、副作用又は機能の障害が生じた場合(適正な使用目的に従い適正に使用された場合に限る。次項及び第七項において同じ。)において人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることからその適切な管理が必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。
高度管理医療機器に関する具体的な規制は、次の通りです。
クラス | Ⅲ・Ⅳ |
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申請者 | 第1種医療機器製造販売業許可が必要 |
製造販売規制 | 製造販売に関わる大臣の承認 |
販売規制 | 販売の許可制 |
まとめ
2014年に改正された薬機法では、新たに開発された再生医療等製品の規制、ソフトウェアの規制、第三者認証制度など医療機器についての様々な規定が明記されました。
また、医療機器は人体へのリスクを考慮した分類が行われています。これらの医療機器について、製造販売業・製造業などに区分して、届出や認証などの規制が整備されたこともポイントです。
このように、医療機器に関する様々な内容が盛り込まれたことによって、改正薬機法では医療機器に関する記載が増えました。医療機器を購入する施設は薬機法ついて理解し、規制に基づいた方法で医療機器を取り扱っている販売業者から購入し、安全対策を行いましょう。