医療機器の解体・撤去の流れ|廃棄方法と業者の選び方も紹介
病院やクリニックでは、医療機器の買い替えや施設・事業所移転など、医療機器を手放す機会があります。医療機器を処分する場合、処分の流れや方法がわからずに悩む方も多いでしょう。
医療機器を解体・撤去する場合には、いくつか注意点が存在します。適切に処分するためにも、前もって把握しておきましょう。
この記事では、医療機器の廃棄方法や、処分に伴う解体・撤去の流れを解説します。医療機器の廃棄・処分における注意点も解説するため、医療機器の廃棄物処分で困っている方は参考にしてください。
1.医療機器の廃棄方法とは?
医療機関の業務で使用した医療機器は、廃棄する場合に産業廃棄物として区分されます。そのため、自治体が管理するゴミ捨て場への廃棄はできません。
医療機器の廃棄方法には、産業廃棄物処理業者に廃棄を委託するか、買取業者に買い取ってもらうことの2通りがあります。それぞれの方法における特徴や注意点を解説します。
1-1.産業廃棄物処理業者に委託する
産業廃棄物処理業者とは、産業廃棄物の廃棄処理について許可を取得している事業者です。産業廃棄物の処理方法を熟知した業者であるため、委託費用はかかるものの、適正な処理ができます。
委託する際の注意点は、処理業者にも「産業廃棄物処理業者」と「特別管理産業廃棄物処理業者」の2種類が存在することです。医療機器に感染性があるか、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の指定有害物質を含むかで、委託できる業者は異なります。処理業者の区分は以下表を参考にしてください。
医療機器の感染性 | 指定有害物質について | 委託できる処理業者 |
---|---|---|
非感染性医療機器である | 指定有害物質を含まない | 産業廃棄物処理業者 |
指定有害物質を含む | 特別管理産業廃棄物処理業者 | |
感染性医療機器である |
1-2.買取業者に買い取ってもらう
不要になった医療機器は、医療機器専門の買取業者に買い取ってもらえます。産業廃棄物処理業者への委託とは異なり、買取業者に買い取ってもらうと収入を得られる点がメリットです。
心電計や血圧計など小型医療機器はもちろん、MRIやCTスキャンといった大型医療機器も買い取ってもらえます。
買取業者を利用する場合の注意点は、信頼できる業者を選ばなければならないことです。たとえば、業者が買い取った医療機器を不適当な方法で廃棄処分すると、元の持ち主である医療機関にまで責任が及ぶケースもあります。医療機器の処分では不法投棄など問題がある事例も多いため、信頼できる業者に買い取りを依頼してください。
2.医療機器の解体・撤去の流れ
医療機器の処分は、買取額が利益となる買取業者に買い取ってもらう方法がお得です。実際に買取業者を利用する場合、どのような流れとなるのか気になる方も少なくありません。
ここでは、買取業者を利用する場合における解体・撤去の流れを紹介します。
2-1.申し込み
まず、依頼したい買取業者に申し込みを行います。申し込みは電話やメールで行うため、対象の医療機器について詳細情報をあらかじめメモしておきましょう。申し込みで伝える必要のある情報は以下の通りで、医療機器の銘板に記載されています。
- 医療機器の一般的名称
- 販売名
- 製造販売業者名
- 型式名
- 製造番号
医療機器の買取額を高くするためには、複数の買取業者に申し込みをして、相見積もりを取ることがおすすめです。2社以上の見積額を比較することで、買取額が高い業者を選ぶことができます。
2-2.現地調査
申し込みが完了すると、買取業者が医療機器の現地調査を行います。現地調査は、正確な見積もりを出すために不可欠なステップです。主な調査内容は以下となります。
- 申し込み内容と実物の医療機器の差異
- 医療機器の外観・動作
- 付属品の有無
- 装置の設置状態
- 搬出経路や作業現場の確認
- 院内や近隣対策の確認
買取業者の現地調査前には、医療機器の外観を軽く綺麗にしておきましょう。綺麗な状態の医療機器は「大切に使われていた」と印象付けることができ、見積額アップを期待できます。
2-3.見積もり
現地調査で得た情報を元に、医療機器買取の見積査定が行われます。複数社に見積りを依頼した場合は、各社の見積額を比較しましょう。
見積もりのステップでは医療機器の解体・撤去に必要な工程や、搬出作業の方法も提示されます。作業費用を別途で請求されないためにも、見積もりの中に解体・撤去にかかる費用が含まれているか、確認してください。
2-4.契約
見積もりで提示された金額に納得した後は、買い取りに関する契約のステップへ移ります。医療機器の買取では売買契約書など契約文書を作成するため、手元に以下の書類を揃えておきましょう。
- 認印
- 振込口座がわかる通帳など
契約の際には解体・撤去作業を行う日時や作業方法も決定します。実施予定日まで時間がある場合は、医療機器に傷を付けないよう大切に保管してください。
2-5.解体・撤去
重量物である医療機器の解体・撤去作業は、買取業者に一任しましょう。医療機器を専門とする買取業者の作業員は、機器構造を熟知していることから、安心して任せられます。
大型の医療機器を撤去する際は、院内の通路やエレベーターに傷を付けないようテープで養生します。搬出経路や解体・撤去時の騒音など、運搬時に配慮してもらいたいことがある場合は、あらかじめ伝えておきましょう。
2-6.作業完了
解体・撤去作業が終わった後は、作業場所や養生箇所など利用したエリアについて確認を行います。問題がなければ作業完了です。作業完了後には作業費用を記載した報告書が提出されるため、見積額と相違がないか目を通しましょう。
医療機器の撤去完了後、1週間程度で指定振込口座に買取金額が振り込まれます。医療機器の買い取りは以上で完了です。
3.医療機器の解体・撤去を行う買取業者の選び方
最後に、医療機器の買取業者を選ぶ基準に関して解説します。医療機器は一般的な製品と異なるため、買取業者側にも特別な許可が必要です。
許可を取得していない買取業者に医療機器の解体・撤去を依頼すると、トラブルに巻き込まれるケースもあるため注意してください。
3-1.「高度管理医療機器等販売業許可」を持っている
高度管理医療機器等販売業許可とは、薬機法で定められた管理医療機器等の販売に必要となる許可です。薬機法では、医療機器をリスクに応じて以下の4クラスに分類しており、クラス2以上の医療機器を販売する業者は販売業許可が必要となります。
医療機器の分類 | 医療機器の例 |
---|---|
クラス1 | 体外診断用機器・メスなど |
クラス2 | 電子内視鏡・MRIなど |
クラス3 | 人工透析装置・人工呼吸器など |
クラス4 | ペースメーカー・ステントグラフトなど |
医療機器は、適正に管理しなければ人体に危害をおよぼす可能性もあるため、買取業者でも販売業許可が求められます。
高度管理医療機器等販売業許可を持っている買取業者は、クラス分類を気にせず買い取りを依頼することが可能です。
3-2.「古物商許可」を持っている
古物商許可とは、古物営業法によって定められている古物売買の営業許可です。医療機器に関わらず、中古品のリサイクル事業では古物商許可がなければ古物売買ができません。ただし、中古販売を行っていない業者の場合、古物商許可は不要です。
古物商許可は、盗品などの売買を禁ずることを目的とした法律です。古物商許可がないまま古物売買を行う業者は摘発されます。利用した業者が古物営業法違反で摘発された場合、医療機関まで警察が確認に来るケースもあるため注意してください。
古物商許可を取得している許可業者であれば、法律違反のリスクなく、安全に医療機器を買い取ってもらえます。
まとめ
ここまで、医療機器の廃棄方法や処分に伴う解体・撤去の流れ、注意点も併せて解説しました。
医療機器を廃棄する場合、産業廃棄物処理業者に委託する方法と、買取業者に買い取ってもらう方法があります。おすすめの方法は、不要な医療機器を現金に換えられる買い取りです。
買取業者を利用する場合は、「高度管理医療機器等販売業許可」と「古物商許可」を持っている業者を選んでください。2種類の許可がない業者を利用すると、トラブルに巻き込まれる可能性があります。安心して利用できる買取業者で、不要な医療機器をお得に処分しましょう。