病院改修はなぜ必要なのか?実施時の注意点と補助金の対象工事も紹介
病院の建物が古くなってくると、美観的にも機能的にもさまざまな問題が生じます。
そのため、病院の改修をして利用者・スタッフどちらにとっても快適な空間をつくりたいと考える病院関係者は多いでしょう。
そこで今回は、病院の改修が必要な理由について解説したうえで、病院の改修で注意すべきポイントと「医療施設等施設整備費補助金」の対象となる工事について紹介します。
なるべくスムーズに病院の改修を行いたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
1.病院の改修が必要な理由とは
病院の改修をしたいと考えてはいるものの、病院の改修をすることの必要性がよくわからず、決断しかねている人もいるでしょう。
多くの病院は「建物の強度改善と安全性確保」や「より良い治療を行うための環境改善」を主たる理由として掲げ、改修を実施しています。
ここからは、この2つの理由について詳細を解説します。
1-1.建物の強度の改善と安全性の確保
新耐震基準が施行される前、すなわち1981年以前に建てられた病院は、震度6強から7の地震に耐えられるように建てられていない可能性が高いため、建物の強度改善が必要です。
また、改修によってバリアフリー設備を充実させれば、高齢の患者さんや障害を抱える患者さんも安心して利用できる病院にリニューアルできます。
耐震性が十分ではなかったり、バリアフリー設備が十分ではなかったりする病院は、患者さんを不安にさせ、足を遠のかせてしまいます。
補修工事や設備工事によって建物の強度を改善したり、安全性の確保をしたりすることで患者さんの満足度を高め、多くの患者さんに選ばれる病院を目指しましょう。
1-2.より良い治療を行うための環境改善
病院改修によって最新の医療設備を導入すれば、治療の幅が広くなり、これまでは対応できなかった病気やけがを抱える患者さんの治療も行えるようになるでしょう。
また、医師や看護師をはじめとする医療従事者のモチベーションも高まり、患者さんに対してより高い医療サービスを提供できるようになります。
病院の経営体制をしっかり整え、患者さんはもちろん、医療従事者にとっても快適な環境をつくりましょう。
2.病院の改修で注意すべきポイント
病院を改修すると、さまざまなメリットを享受することができるでしょう。
しかし、病院の改修をする際、いくつかの注意点をおさえておかなければ、改修後に思わぬトラブルが発生する可能性があります。
ここからは、病院の改修で特に注意したい2つのポイントを紹介します。
2-1.改修中も医療機能・収益を維持する
スムーズに病院の改修を進めるためには、改修中も医療機能・収益を維持することが大切です。
改修中に医療機能を縮小した場合、必要諸室の面積減少などを理由に診療報酬単価を下げられてしまう可能性があります。
もし、改修中に予想外の工事が発生して工事費がかさんだ場合、改修中の収益減少が病院経営に大きな悪影響を及ぼしてしまうでしょう。
病院を改修する際には医療機能を維持できるよう、綿密な医療施設整備計画を立ててください。
なお、建物解体工事をするなどして必要諸室の面積減少などが避けられない場合には、病院周辺の賃貸物件を借りて一時的に医局を移すことも、有効な方策のひとつです。
その他、改修中の医療機能・収益維持に不安がある場合は、行政に相談してアドバイスをもらいましょう。
2-2.改装中の音・振動について患者さんの理解を得る
病院の改修を行う際には大きな音や振動が発生するため、多くの患者さんに不快感の抱かせてしまいます。
しかし、改装中の音・振動を完璧に防ぐことは不可能です。
そのため、患者さんから理解を得られるよう、工事開始前に手紙で工事予定を知らせるなどして協力を仰いだり、工事の詳細をポスターにして設置したりしておきましょう。
また、診察や検査などの医療現場に影響を与えないように注意することも大切です。
もし、改修中の騒音や振動によって医療機器に誤作動が起きてしまった場合、医療ミスにつながってしまう可能性があります。
工事期間中も患者さんが安心できる医療サービスを提供できるよう、診察室や検査室周辺の工事は土日祝日に行うなどの工夫をしましょう。
3.「医療施設等施設整備費補助金」の対象となる工事は?
病院の改修を実施する場合、医療施設等設備費補助金を利用できる可能性があります。
医療施設等設備費補助金とは、厚生労働省がへき地医療の確保や臨床研修医の研修環境の充実などを図ることを目的に交付する給付金です。
ここからは、医療施設等設備費補助金の対象となる工事を紹介します。
なお、各情報は厚生労働省から発表されている「医療施設等施設整備費補助金交付要綱」をもとに記載しています。
3-1.へき地診療所施設整備
対象となる 施設整備 |
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対象となる工事 | 以下に挙げる新築、増改築及び改修工事(既存へき地診療所の改修は対象外)
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補助率 | 2分の1 |
3-2.過疎地域等特定診療所施設整備
対象となる 施設整備 |
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対象となる工事 | 以下に挙げる新築、増改築及び改修工事(既存過疎地域等特定診療所の改修は対象外)
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補助率 | 2分の1 |
3-3.へき地保健指導所施設整備
対象となる 施設整備 |
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対象となる工事 | 以下に挙げる新築工事
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補助率 | 3分の1(沖縄県は2分の1) |
3-4.研修医のための研修施設整備
対象となる 施設整備 | 私立医科大学附属病院、私立歯科大学附属病院または臨床研修病院の開設者が行う施設整備 |
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対象となる工事 | 以下に挙げる新築または増改築工事
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補助率 | 2分の1 |
3-5.臨床研修病院施設整備
対象となる 施設整備 | 私立医科大学附属病院または臨床研修病院の開設者が行う施設整備 |
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対象となる工事 | 以下に挙げる新築、増改築工事
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補助率 | 2分の1 |
3-6.へき地医療拠点病院施設整備
対象となる 施設整備 |
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対象となる工事 | 以下に挙げる新築、増改築工事
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補助率 | 2分の1 |
3-7.医師臨床研修病院研修医環境整備
対象となる 施設整備 | 都道府県が補助する施設整備 |
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対象となる工事 | 共用部分を含む臨床研修医の研修環境、生活環境の充実を図るために必要な宿舎の新築、増改築工事 |
補助率 | 3分の1 |
3-8.離島等患者宿泊施設施設整備
対象となる 施設整備 |
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対象となる工事 | 離島等患者宿泊施設として必要な新築、増改築及び改修工事 |
補助率 | 3分の1 |
3-9.産科医療機関施設整備
対象となる 施設整備 |
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対象となる工事 | 以下に挙げる新築、増改築及び改修工事
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補助率 | 3分の1 |
3-10.死亡時画像診断システム施設整備
対象となる 施設整備 |
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対象となる工事 | 死亡時画像診断の実施に必要な施設の新築、増改築及び改修工事 |
補助率 | 2分の1 |
ここまで紹介したように、医療施設等設備費補助金の対象となる工事は豊富にあります。
上記で紹介した条件以外にも細かな条件が定められていたり、地域や年度によっても独自の補助金制度が設けられていたりする可能性もあるため、まずは一度厚生労働省の窓口に相談・確認してみましょう。
まとめ
病院の改修を行えば、建物の強度改善や安全性の確保をすることができるうえ、より良い治療を行うための環境改善をすることができます。
ただし、病院の改修を行う際には、改修中も医療機能と収益を維持すること、改装中の音や振動について患者さんに理解を得ることの2点について十分に注意してください。
今回ご紹介した医療施設等施設整備費補助金など、病院改修の際に利用できる制度を活用し、病院の改修をスムーズに進めましょう。