医療機関の移転などにともない、これまで使用していた医療機器の廃棄が必要になる場合、どのような手順で処分をすればよいのでしょうか?
医療機器は種類によって廃棄方法が異なります。
安全性を配慮したうえで、適切に処分をすることが大切です。
こちらでは、医療機器の廃棄方法についてお伝えします。
1.医療機器の種類で異なる廃棄方法
医療機器の種類は、主に「非感染性医療機器」と「感染性医療機器」の2つに分けられます。廃棄処分するときにはこれらの分類が必要となるため、必ずご確認ください。
医療機器の種類 |
- 非感染性医療機器
感染性医療機器以外の廃棄物のことです。医療機関から生じた廃棄物であっても、感染の危険性がある物質に触れていないため、一般的な廃棄物と同様に処分されます。 |
- 感染性医療機器
医療機関から廃棄され、血液や微生物など感染の危険性がある物質に触れた可能性のあるものは、感染性医療機器に分類されます。専門業者による廃棄が必要です。 |
1-1.非感染性医療機器の廃棄方法
非感染性医療機器を廃棄するときの基本的な流れは下記の通りです。
非感染性医療機器の判断方法と廃棄方法 |
1.感染の判断基準に該当しないかを確認する | 一部の非感染性廃棄物も、感染性廃棄物と同様に扱われるため注意しましょう。 輸血用血液製剤は、感染性廃棄物と同等の取り扱いになります。 |
2.感染の判断基準に該当するものは院内処理をする | 院内処理を行い、かつ鋭利でないものは、非感染性廃棄物の扱いになります。 院内処理を行わないものは、感染性廃棄物の扱いになります。 |
3.鋭利なものに限って感染性廃棄物とする | 非感染性廃棄物であっても、鋭利なものは感染性廃棄物と同等に扱われるため注意しましょう。 |
4.産業廃棄物として処理 | 廃棄物の種類の区分にしたがって処理を行います。 廃棄物処理法には「非感染性医療機器」という区分はないため、それぞれの廃棄物の区分について確認が必要です。 |
1-2.感染性医療機器の廃棄方法
感染性医療機器を廃棄するときの基本的な流れは下記のとおりです。
感染性医療機器の判断方法と廃棄方法 |
1.感染の判断基準に該当しないかを確認する | 血液、病理廃棄物、病原微生物にかかわる試験や検査に用いられたもの、鋭利なものなどは感染性医療機器に該当します。 |
2.感染の判断基準に該当するものは院内処理をする | 院内処理を行い、かつ鋭利でないものは、非感染性廃棄物の扱いになります。院内処理を行わないものは、感染性廃棄物として扱います。 |
3.産業廃棄物(運搬処理)許可取得業者へ委託 | 都道府県より許可を取得した業者に委託して、感染性医療廃棄物の処理を行います。 |
4.マニフェストの発行 | 産業廃棄物を排出した医療機関がマニフェストを発行して、最終処分が終了するまでの確認を行います。 マニフェストは送付から5年間の保存が義務付けられています。 |
5.廃棄処分を確認する | マニフェストが医療機関に戻ってくるのを確認します。 マニフェストが戻らない場合や記載内容に不備がある場合には、自治体への報告が必要です。 |
2.医療機器を廃棄するのにかかる費用
医療機関から廃棄されるものは、感染性医療機器または非感染性医療機器に分類され、特殊な業者に委託したうえで廃棄をする流れになります。経営のためには廃棄コストをできるだけ抑えることが大切です。ここからは、医療機器を廃棄するときにかかる費用についてお伝えしていきます。
2-1.医療機器の廃棄にかかる費用は不透明
感染性廃棄物を処分するためには、法律で義務付けられた科学的な殺菌処理が必要であり、再利用が禁じられています。
廃棄には高額なコストがかかるため、大部分の医療機関が外部委託しているのが現状です。
しかし、外部委託する際の処理費用は明確に決まっておらず、業者や廃棄する医療機器によって異なります。
東京都医師会では、社団法人全国産業廃棄物連合会廃棄物部会試算を元にして、適切な処理を行うためのコストを「1kgあたり300~350円」と示しています。
その一方で、医療機関へのアンケート調査では「1kgあたり125~250円」という結果も出ており、適正コストの検討は依然として課題となっています。
高額な医療機器の廃棄コストをできるだけ安く押さえつつ、適切に処分する方法はあるのでしょうか?
(出典:漂流・漂着ゴミに係る国内削減方策モデル調査総括検討会報告書/https://www.env.go.jp/earth/report/h21-01/chpt1-5-5.pdf)
2-2.廃棄費用を安く抑えるには
医療機器の廃棄費用をできるだけ安く抑えるには、適切な処理方法選ぶこと、廃棄量を減らすことが大切です。ここでは、廃棄にかかるコストを削減するためのポイントをご紹介していきます。
<粗大ごみに出せる医療機器もあることを知る>
まずは粗大ごみとして回収してもらったり、一般廃棄業者へ依頼したりすることで廃棄が可能な医療機器について見ていきましょう。
非感染性医療機器であっても、一般家庭で使われているような医療機器であれば、認識としては家電となるためそのまま廃棄できます。
<中古販売業者などに買い取ってもらう>
前項以外の医療機器については、中古販売業者などの買取業者を活用するという方法があります。
本来かかる廃棄コストを削減できる点が大きなメリットです。
〇買い取りの可能な医療機器〇
- 画像診断系の医療機器(CT、MRI、内視鏡関連機器、超音波装置、レントゲン装置など)
- 小型医療機器(心電計、自動血圧計など)
- 減菌機
- 手術台
- 各種検査機器
タケメディカルでは無料引き取りも行っておりますので、一度相談してみましょう。
▼タケメディカル
http://take-medical.com/
3.医療機器を廃棄する業者の選び方
すでにお伝えしたとおり、感染性医療機器および廃掃法の指定有害物質を含む非感染性医療機器については、特別管理産業廃棄物(運搬処理)許可取得業者(専門業者)への委託が原則です。
しかし、非感染性医療機器の廃棄については買取業者を活用することで、コストが抑えられます。2種類ある廃棄業者のどちらを選ぶのが適切なのかを、シチュエーションなども踏まえて考えていきましょう。
3-1.専門業者での廃棄と買い取りのメリット・デメリットを比較
専門業者と買取業者、それぞれのメリットとデメリットについて簡単にまとめてみましょう。
| すべて専門業者に委託する | 一部買い取りを利用する |
メリット | 安全かつ確実に医療機器を処分してもらえる | 買い取りにより廃棄コストを削減できる |
デメリット | 業者によっては高額な廃棄コストがかかる | 信頼できる業者を見つける必要がある |
3-2.環境ISOを取得したいならリサイクル重視で選ぶ
現在環境ISO(ISO14001)の取得を目指している場合は、医療機器の廃棄については注意が必要です。
そもそも環境ISOとは、組織を取り巻くヒト・モノに対し、組織が与える環境影響を明確にし、悪影響ある場合にそれを解決するためのマネジメントシステムのことです。
環境配慮につながるだけでなく、日頃の業務をシステム化できるという点もメリットとして挙げられます。具体的なベネフィットを見てみましょう。
- 患者に対して安心と信頼感をアピールできる(広告への記載も可)
- 院全体にトップの考えを共有できる
- システム導入により、日常業務を標準化できる
- 業務改善の継続かにつながる
このように、医院にとっても取得が望まれる環境ISOですが、取得のためには廃棄物処理法が遵守されているかが重要な要素となります。
端的に言えば、リサイクルという観点についてどの程度力を入れているかが見られる、と言うことです。
その意味で言えば、コストばかりに目を向けると、この基準がクリアできない可能性もあります。
そのため、業者選びの際には、処理方法を含め、リサイクルへの取り組みがどのようになされているかをチェックしてください。
4.マニフェストを確認して適切な廃棄を
医療機器を廃棄する際は、排出事業者がマニュフェストを発行し、適正な処理の確認を行うことが「マニュフェスト精度」によって義務づけられています。具体的には、マニュフェストの交付後90日以内に中間処理の終了を、180日以内に最終処分の終了を確認しなくてはなりません。
では、この「排出事業者」とは誰を指すのでしょうか。以下から、その定義や責任の所在について解説します。
4-1.マニフェストを発行する「排出事業者」の定義
排出事業者とは、法的な意味で「医療機器を所有する者」と定義されます。
該当の医療機器が購入されたものであれば、その所有社は支払いを行った医療機関ということになります。
一方で、医療機器をリース契約で導入している場合は、法的な所有社はリース会社です。
このように現在どこにあり、誰が使用しているのかではなく、あくまでも法的に所有権を持つ者が排出事業者となることを覚えておきましょう。
4-2.廃棄者としての責任
前提として、医療機器を廃棄する方法には、以下の3パターンが考えられます。
- (1)医療機関が産業廃棄物処理業者に直接委託して処分する
- (2)医療機器のメーカーが回収を行った後で処分する
- (3)販売業者、修理業者、および買取業者を介して処分される
この際に注意すべきは、(3)のケースです。
医療機器のような産業廃棄物は運搬の際に「産業廃棄物収集運搬許可」が求められます。しかし、販売業者や修理業者のなかには無許可で運搬を行うところも存在します。
また、そもそもこうした業者が産業廃棄物処理を医療機関に代わって行うこと自体が法的に認められていません。
そのため、本来であれば医療機器の所有権の移転手続きが必要なのですが、正しく実施されていないのが現状と言われています。
上記のような方法を使い医療機器を廃棄した場合の責任は、前項でもお伝えしたとおり「排出事業者=法的な所有権を持つ者」に課せられます。
そのため、業者を利用する場合には最終処理場で、マニュフェストに沿った処分がなされたかを確認する必要があり、かつその確認には責任が伴うことを忘れないようにしましょう。
まとめ
医療機器は産業廃棄物となるため、廃棄は容易ではありません。
しかし、適切な処分は事業者の義務です。そのことを踏まえつつ、今回ご紹介した費用の抑え方を参考に、廃棄方法について医院の方針を固めましょう。
なお、処理業者は行政の許可を受けているか、確認することも忘れないでください。