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クリニックの閉院に伴う作業とは?医療機器の処分方法についても解説

自身の年齢や健康状態の問題でクリニックの運営持続が難しくなり、クリニックを閉院しようと考えたとき、具体的にどのような作業を行えば良いか分からない方もいるでしょう。また、医療機器の処分は簡単には行えないため、処分方法に悩む方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、クリニックの閉院に伴い必要となる作業について、分かりやすく解説します。また、医療機器を処分する2つの方法についても紹介しているため、クリニックの閉院を検討している方や、医療機器を処分したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

1.クリニックを閉院する際の作業

業務を停止しただけでは、クリニックを閉院したことにはなりません。手続きの内容はさまざまなため、すべての手続きを正確に完遂するための時間が必要です。

閉院作業には、以下のようなものがあります。

  • ●各行政機関や役所などでの閉院手続き
  • ●保管義務に伴う継続保管
  • ●医療機器・残存医薬品の処分
  • ●クリニックのスタッフ・取引業者・患者への閉院告知

ここでは、上記4つの閉院作業について詳しく紹介します。

1-1.保健所などへの手続き

クリニック閉院に関する申請先と必要となる書類は、以下の通りです。

保健所
  • ●診療所廃止届
  • ●X線廃止届
厚生局
  • ●保険医療機関廃止届
都道府県庁
  • ●事業廃止届
医師会
  • ●麻薬廃止届
労働基準監督署
  • ●医師会退会届
ハローワーク
  • ●労災保険確定保険料申告
健康保健加入団体
  • ●雇用保険適用事業所廃止届
  • ●雇用保険喪失届
  • ●雇用保険離職票
院内
  • ●従業員の退職証明書
  • ●健康保険喪失届
  • ●健康保険証回収

クリニックの閉院には、閉院届に関する手続きだけでなく、スタッフの社会保険関連の手続きなど、多くの手続き書類に対応する必要があります。そのため、クリニックの閉院を決めた後は、手続きに関して1年間くらいのスケジュールと計画を練らなくてはなりません。

クリニックによっては提出する必要がないものや、追加手続きを要するものもあるため、注意しましょう。

1-2.カルテなど保管義務があるものの継続保管

診療記録であるカルテは、医師法第24条第2項により「5年間の保管義務」があります。

前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。
引用:電子政府の総合窓口e-Gov「医師法」

この条項の「管理者」とは、一般的には院長を指します。例外は、都道府県知事の許可の元でクリニックを開設した場合のみです。

電子カルテと紙カルテには、以下のような保存方法があります。

電子カルテ 紙カルテ
  • ●本体(ハードディスク)を買い取って保管
  • ●リース会社と協議して再リース
  • ●外付けハードディスクやCDにデータを移して保管
  • ●外部業者設備にデータ保存を委託
  • ●十分なスペースを確保し保管
  • ●民間保管業者に委託

上記から分かるように、電子カルテと紙カルテでは保存方法が異なります。
外部や民間業者に委託する際は、厚生労働省などのガイドラインを順守するようにしましょう。

1-3.医療機器・医薬品の処分

医療機器・医薬品の処理方法には、以下の2種類があります。

  • ①自院で廃棄
  • ②廃棄業者・管轄の保健所に委託

医療機器・医薬品は、売却することが可能です。
自院で医療機器・医薬品の廃棄が困難な場合は、廃棄業者または管轄の保健所を利用すると良いでしょう。

自院で産業廃棄物として医療機器・医薬品を廃棄する場合は、以下の点に注意しましょう。

  • ●向精神薬の廃棄に伴う記録と保存方法
  • ●保健所の立会いの下での麻薬の廃棄と麻薬廃棄届の提出方法
  • ●薬品の処理方法と対象となる形状の違い

また、廃棄業者に委託する際も、「最初から最終処分までの担当業者の明示しているか」「廃棄物の処理状況を写真または記録で報告可能か」「廃棄物管理票の明示しているか」を確認したうえで、医療機器・医薬品を廃棄しましょう。

1-4.スタッフ・取引業者・患者への告知

継承者ありきの閉院か、後継者不在の完全廃業かによって、スタッフ・取引業者・患者への閉院告知のベストなタイミングは異なります。

継承者が決まっている場合は、職員と取引業者に閉院予定の3ヶ月前には通知をしましょう。重要取引業者や部門長など、責任者クラスから先に継承予定を伝えます。

その後に患者への告知を行います。治療の引き継ぎを兼ねて継承者と診察を行うことで、スムーズに継承を行うことが可能です。

継承者がいない完全廃院の判断を下した場合は、なるべくはやく職員へ連絡しましょう。40代くらいの職員が即座に新たな勤務先を見つけることは、非常に困難です。半年前には連絡を行い、再就職先を探しながら仕事をする期間を用意しましょう。

患者への閉院告知は、3ヶ月あれば他院へ紹介できるため、継承者がいる場合と告知のタイミングは変わりません。

2.クリニックを閉院する際の2つの医療機器処分方法

自己所有している医療機器か、リースしている医療機器かによっても、処分方法は異なります。

リース料が残っている医療機器は、閉院までに精算します。清算後は産業廃棄物処理業者へ医療機器の処分を依頼し、クリニック側の負担で廃棄処理を行います。リース会社に相談せずに廃棄処分をすることがないよう、注意してください。

リースしている医療機器を新しい承継者に譲渡する場合も、リース会社との相談は欠かせません。事前にリース会社と打ち合わせをして、新たに承継の契約を締結する必要があります。

では、自己所有している医療機器の処分はどのように行うのでしょうか。最後は、自己所有している医療機器の2つの処分方法について詳しく解説します。医療機器の処分方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

2-1.処分業者へ依頼して処分

医療機器の廃棄処分は、簡単ではありません。廃棄処理業者に医療機器の処分を委託することはできますが、最終的な処分義務に関しては自己所有していた者に生じます。そのため、処分証明書の発行をしてくれる処分業者を選ぶことが重要です。

売却できなかった医療機器は、産業廃棄物処理業者に有料で引き渡すこととなります。業者選びに困った場合は、当該保健所もしくは自治体の役所に問い合わせをしましょう。

手袋や注射針など医療廃棄物として処理していたものについては、お世話になっていた医療廃棄物業者に依頼しましょう。

2-2.中古医療機器買取業者への買取依頼

医療機器は高価でコストがかかりますが、買取を依頼する際には評価額は低く、高額で買い取ってもらえないことがほとんどです。

医療技術とともに医療機器の進化は日進月歩のため、当時は最新であっても暫くすると古くなり、価値が薄れてしまいます。また、使用年数が長いと買い取り不可となることも少なくありません。

中には、「大型医療機器から事務機器、小さな医療材料に至るまですべて買い取る」という中古医療機器買取業者もいます。しかし、ほとんどの場合は機器や材料は売れ残るため、処分費用がかかってしまうケースも珍しくありません。

医療機器の一括処分を考えた場合、前項で述べたように、処分証明書の発行などを用いてそれぞれの医療機器の最終処理方法をすべて確認できる業者を選ぶことがポイントです。
処分業者に委託することで簡単に医療機器を処分することはできますが、後ほどトラブルとなる可能性もあります。閉院後のトラブルを避けるためにも、最終処分まで責任を持って行う業者であることを確認したうえで、医療機器の処分を委託しましょう。

まとめ

クリニックを閉院するためには、閉院届を提出する他、スタッフの社会保険関連の手続きなど多くの作業を行わなくてはなりません。閉院を決定してから手続きを終えるまでに1年程度かかるため、スタッフや取引業者、患者へ告知をするタイミングには注意しましょう。

医療機器は自院で廃棄することもできますが、廃棄処理業者に処分を委託することがおすすめです。自院で廃棄するよりも簡単に処分することができます。ただし、最終的な処分義務は所有していた者に生じるため、処分証明書を発行してくれる業者を選びましょう。